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2013年9月10日 (火)

トップリーグ第2節 クボタ戦レポート

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開幕2戦目でも勝てなかった。

 ただし、近鉄ライナーズに攻撃的姿勢は戻ってきた。

 クボタスピアーズに17-22。8月31日の初戦、0-46といいところなく敗れたパナソニックワイルドナイツ戦に比べれば、わずか一週間でライナーズは見違えた。

 

 東京・秩父宮ラグビー場、午後5時開始の薄暮ゲームだった。カクテル光線にブルーのセカンドジャージがまぶしい。初戦の曇りのち雨とは違い、晴れ。風もなかった。

 

 ライナーズはいきなり失点する。前半2分、モールからNO8タキタキ・エロネにインゴールに飛び込まれた(ゴール失敗)。10分に反撃。スクラムのコラプシングで得た約45メートルPGをSO重光泰昌が決め、3-5と追い上げた。お互いPGを加え、6-8となった31分、再びディフェンスにほころびが生じる。左オープンのクボタボールのスクラムでラインに入っていたWTB伊藤有司が右に移動。虚をつかれ、できたラックからサイドを抜かれ、再びタキタキにゴールラインを越えられた(ゴール失敗)。39分に重光がPGを決め、9-13で前半は終了する。

 

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 ライナーズは後半13分、ラインアウトモールから、FLタウファ統悦がインゴール右隅にボールを叩きつけた(ゴール失敗)。今季チーム初トライは14-13と逆転を呼び込んだ。タウファは「最終的に自分がトライを取ったけど、8人でいいモールが組めた」と喜んだ。

 20分にはクボタ、23分にはライナーズがPGを成功させ17-16。勝負は30分を過ぎて決まる。クボタCTB立川理道のラインブレイクを起点にゴール前まで迫られ、クボタボールのスクラム。ここで、コラプシングを取られる。このPGを立川に決められ17-19と再逆転された。39分にもPGを入れられ、17-22でライナーズは敗れた。

 

 後半21分から4トライを失ったパナソニック戦を分析して、リーグ第2週は試合形式の練習で、わざと笛を吹かず、プレーが細切れになることをさせなかった。

 前田隆介監督は説明する。

「切り返しの反応を高めたかった。アタックからディフェンスに。そしてその逆。アンプレイアブルの状況から対応させたかった」

 後半のクボタのトライ数0。成果は表れた。

 

 後半1分には敵陣ゴール前で得たPKでショットを選択せず、タッチからのラインアウトモールを選択した。結果的にはインゴールでグラウディングができず、トライは奪えなかったが、アグレッシブな姿勢は示した。

 

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 敗戦にタウファは悔しさを表わす。

「初戦よりよくなってきているけど、タックルのところは受けた感じが強い。クボタの2つのトライは止められている。仰向けに倒せた」

 前田監督は総括した。

「ゴール前に行って、ラインアウトからのモールでトライを取れたのは収穫。ウチの強みが出せた。ただ、ラインディフェンスがもう少し前に出ないといけない。そうしないと接点で食い込まれてしまう。攻撃的なディフェンスをしていかないと勝てない」

 

 対戦チームのクボタには、日本ラグビーの将来を託された立川がいる。日本代表キャップ19。天理大学から入社2年目でチームの主軸になった。前半開始早々には抜け出した重光の腕に絡み、ノックオンを誘発。先制トライを決めさせなかった。後半、SO高橋銀太郎から代わってキッカーを務めた。20、33、39分と3本のPGを決め、勝利を手繰り寄せた。

 

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 ライナーズには立川がいないのか?

 いる。

 可能性を秘めるのが、同じ2年目、24歳で今季初先発となったWTB島直良だ。

 奈良・やまのべラグビー教室、天理中学、天理高校で立川の同級生として楕円球を追った。

 前田監督は起用理由を説明する。

「ビッグチャンスを与え、才能を開花してもらいたい」

 持ち味の一瞬で相手を置き去るワンダッシュからのランを垣間見せた。

 前半8分、逆サイドから走り込み、ゲームキャップテン、CTB森田尚希の真横にライン参加。瞬間移動で裏に抜けた。

 だが、現実はそんなに甘くない。

 左足に力を入れ、アウトに抜けようとした刹那、空いた右わき腹にWTB柴原英孝の上半身がぶち当たる。31歳、9年目を迎えたクボタのトライゲッターに緑芝に叩きつけられた。上のレベルの洗礼を受けた。

 トップチームで戦うなら、ボールをキャッチして、リリースするまでが仕事だ。立川はプレーの派手さに目を奪われがちだが、パスを放すまで指先に集中し、レイトタックルをものともしない。日本代表に選ばれた理由の一つである。

 

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 島には課題が残る。それでも逆の左サイドから駆け上がっての走り、さらに、慣れた右WTBとは違う左での出場を考えれば、才能の埋蔵は見て取れる。

 パスを出した森田はそのタレントを認める。

「ポテンシャルは高い。スペースさえあれば抜けていく。もっと積極的に動いて経験を積んでほしい」

 

 島は振り返る。

「秩父宮は初めてですごく緊張していた。それもあって自分のプレーができなかった。これからはサイド関係なくボールをもらいに行きたい」

 立川とは社会人として初めて対戦した。チームとして敗れた。個人としてもキャップホルダーとノンキャップと、今は差をつけられている。それでも、今がゴールではない。

「立川は代表。力は図抜けている。でも、別の人とは思っていない。彼の存在を励み、糧にしたい」

 今年4月から朝6時にHO太田春樹主将と1時間のウエイトトレーニングを始めた。仕事に影響をされず、体を作るためだ。大学時代に比べ、体重は8キロ増しの85キロになった。8月、北見で行われたサントリーとの練習試合ではトップリーグ随一のBKに対し、ラインブレイクを見舞った。少しずつだが、確実に成長している。

 

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 日本代表監督、エディー・ジョーンズはかって大学生に提言した。

「日本の大学生は世界を見てほしい。秩父宮や花園でプレーしたり、レギュラーになる以上に、ニュージーランドや南アフリカの20歳以下代表が何を考えて、何をやっているかを考えてほしい」

 その言葉は島を含め、PR前田龍佑、才田修二、SH森雄祐ら入社2、3年目の若手にそのまま当てはまる。Aチームに入ることは大事だ。正選手にならなければ、何も始まらない。ただ、そこで小さくまとまってしまうのではなく、常に一番上を目指すべき。ウェールズ撃破の将はそう説く。桜のジャージーを手にする。その高い志を持った取り組みが、ひいてはライナーズに還元されてゆく。やるからには、チームも個人も頂点を目指さないと意味がない。限界点を自分自身で決めてしまわないことだ。

 

 終戦後の一時期、近鉄のコーチをつとめた知葉友雄の言葉が残る。

「極限を追い、最高に接せよ」

 知葉は明治大学出身者として初の日本代表に選ばれた。亡き北島忠治元明大監督の親友で、戦前、戦中のスタープレーヤーだった。引退後は朝鮮鉄道や日本大学で監督をつとめた。

 

 70年近く昔にコーチをつとめた指導者の言葉を、まず若手が実践すべきではないのか。若さの突き上げが、チーム力底上げの源になる。リーグ第3戦は9月14日、今季からトップリーグに復帰したコカ・コーラウエストレッドスパークスだ。

 もう負けられない。

 

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 (文:スポーツライター 鎮 勝也)

(写真:石坪 隼)

 

【前田監督コメント】

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 アウェイにも関わらず、たくさんの皆様に会場で熱いご声援をいただきありがとうございました。その「熱い」ご声援に応える結果に繋がらず残念です。

次節は必ず、グラウンドでチームスローガンの「AGGRESSIVE REVIVE」を体現します。

皆様、引き続きご声援宜しくお願い致します。