« ライナーズのスタッフが奈良県スクール選抜選手へ、ラグビーに関するコンディショニング・栄養学講習会、ラグビークリニックを行いました | メイン | 6月9日(日)故・中井 太喜選手への追悼メッセージについて »

2013年6月11日 (火)

6月9日(日)豊田自動織機戦レポート

近鉄ライナーズ今季オープン戦初勝利には先発した新人が貢献した。

 帝京大学出身のWTB南藤辰馬がスピードランで第1ハーフ(30分×3ハーフ制)17分に先制トライをマークすれば、流通経済大学出身のFL辻直幸は素早い寄りとヒットでボールリサイクルに貢献した。今季からトップリーグ再昇格が決まっている豊田織機シャトルズに1912。春シーズン3戦目、ホームの花園での白星はトヨタ自動車に1431、リコーに7-19と連敗した嫌な記憶を払しょくした。

 南藤はこぼれ球をさらい、40メートルを独走して、インゴールに駆け込んだ。ボールに対する反応、相手ディフェンダーを振り切る脚力など新人離れしている。「トライはたまたま、先輩たちがディフェンスを頑張って下さった結果。自分はチームでのトライと思っている」。振り返る言葉もルーキーとは思えない。帝京大学の前人未到となる大学選手権4連覇に貢献。入学から卒業まで〝負けなし〟の4年間を過ごした男は、人間としてもできている。

Imgp2148_3

 第2ハーフ9分には大外で魅せる。最初はトイメンのWTB朝見力弥に外勝負を挑んだが、アウトが詰まってると判断するや敢然とぶち当たった。ベンチプレスMAX140キロのコンタクトに朝見は飛び、インブロー(内返し)の球はつながった。わずか一瞬で最良のプレー選択。「前をよく見ているし、あそこで相手にぶちかましに行く思いがいい。強さもある」前田監督。ライナーズ1年生ながら秋には48時間前のメンバー表にその名を連ねる可能性は十分ある。出場2ハーフは首脳陣の期待感の表れでもある。

 トップリーグでの初オープン戦となった辻は、派手さはない。しかし、FWプレーヤーにもっとも必要なひたむきさがある。タックル後、鼻が付くほどの低さで、ラックで寝ているプレーヤーの脇腹を通過して、ルーズボール争奪戦に参加する。激しく、低いディフェンスは、大阪市立大宮中学を卒業後、流通経済大学柏高校、そして流経大と7年に渡る〝関東留学〟で磨かれた。FW戦がその代名詞になるチームでラグビーを学んだことが開花している。「初めての試合だったけど、先輩方とコミュニケーションは取れたと思う」。前田監督は「ポテンシャルが高い。ボール際に入られる強さもある」。現在は研修、瓢箪山駅で駅務を学んでいる22歳を評価した。この日の背番号は51(持ち番号)。アメリカメジャーリーグ、ニューヨークヤンキースのイチローがオリックス・ブルーウェーブ、そしてシアトル・マリナーズで背負った番号と同じ。ラグビーと野球。競技こそは違うが、何かを期待させる動きを1ハーフの出場ながら、辻は持っている。

Imgp2101

 試合は第1ハーフ17分の南藤のトライで近鉄が先制(ゴール成功)。第2ハーフは3、13分と豊田織機に連続トライを許して7-12で終了した。3分はゴール前スクラムから単純な「ハチキュウ」(NO8がサイドを突き、SHにパスを出す)を止められなかった。6月とはいえ、この5点は防がなければいけないものだった。第3ハーフ8分にはゴール前のラインアウトからCTBジーン・フェアバンクスが残像の残るインサイドランでインゴールラインを超える。ゴールは失敗も同点に追いついた。試合が決まったのは27分。ゴール前ラックからSH森雄祐がサイドを抜いてインゴールに飛び込んだ。

Imgp2141 Imgp2106 Imgp2127

 若手に経験を積ますため、縦割りで臨んだ試合で結果を残せた前田監督の表情は明るい。「ミスもあったけど、(オフロードパスなど)取り組んできていることが出せたことは大きい」。HOで2ハーフに出場した太田春樹主将は「勝ててよかった。(勝負事は)勝つのがすべて。今週、練習してきた前に出てディフェンスすることもできた。パスミスなど細かいミスが出たが、これから修正していきたい」と声を弾ませた。

Imgp2190 Imgp2201 Imgp2219

 

 この日は試合のあった第2グラウンド裏で故中井太喜を偲び、ライナーズ旗に寄せ書きが行われた。地元、東大阪ラグビースクール主催のスクール大会が隣のアップグラウンドで行われたこともあって、観戦者は約500人。試合前後に中井への思いを書きつづった。ライナーズは中井とともに。南藤や辻ら新入団選手の活躍、そして今季オープン戦初勝利は、何よりの供養になったに違いない。

Imgp2255 Imgp2269 Imgp2285

(文章:スポーツライター 鎮 勝也)